貧乏旅行の話

25.トレッキングを楽しむ

オーストリア(Neustift)

ネパール(Nagarkot)

ネパール(Pokhara)

ベトナム(Sapa, Bac Ha)

ラオス(Muang Sing)

マレーシア(Gunung Mulu)

マレーシア(Niah Caves)

マレーシア(Taman Negara)

インドネシア(Ketambe)

 
 海外旅行が一般化し、航空運賃や滞在費用も安く、国内旅行とさして変わらなくなった。そして、ただ単に名所、旧跡を訪ねたり、買い物を楽しむ旅行から、自然や登山を楽しむなど海外旅行も多様化してきている。最近は山岳民族を訪ねたり、象や馬に乗り山野を歩く、筏やボートに乗り川下りを楽しむなど、自然を楽しむ手段も商業化がかなり進んでいる。

 日本では中高年者の登山がブームと言われる。その延長でスイスアルプスやニュージーランド、東南アジアの最高峰キナバル山やエベレスト山を見るために、中年登山愛好者がツアーを組んで出かけている。
 海外のトレッキングは数日間を掛けて歩く本格的な山歩きから、ハイキングに近い簡素な物までいろいろである。私が訪ねたハイキングに近い、トレッキング情報である。

 キナバル山登山はこちらを参照ください。


オーストリア(Neustift)

 "Neustift"はインスブルクより、バスで1時間余りの所にあるリゾート地である。ハイキングや山登りをする人々の基地となっている。この地を私に教えてくれたのは旅行会社の担当者であった。彼女は何かの本で知り、行ってみたいと思っていた所らしい。

 宿泊したペンションの裏山よりオーバーベルク谷に下りる。川沿いの道路を歩き山小屋へ向かう。正面には雪を抱いた山がそびえる。途中歩いていると、観光客が乗ったジープが停車した。会社のグループで私を乗せてくれた。車道が途切れ、ジープを下車した。川沿いの草原を歩き、前面にある山にとりつく。1時間余りにてヒュッテに達する。ここより先は岩と雪の世界であった。装備を持たない私は、ロッジで休息後引き返すことにする。

 森林限界を超えているためか、日本の山のように木々が生えてなく、草地が広がる。山間に草を食む牛のカウベルが響き、山羊が岩山でこちらを見ている。

Neustift
山小屋、Neustift

ネパール(Nagarkot)

 1974年10月、首都カトマンドゥよりヒマラヤの山々を見に行く。"Kathmandu"から"Bhadgaon"まではトロリーバスに乗る。その先は交通手段がないため、未舗装の自動車道を"Nagarkot"まで歩く。道は谷沿いに続く。眼下に広がる谷と、深い木々の緑を味わいながら歩く。途中から登り坂となり、歩行行程は約4時間であった。標高2100メートルの山上に、粗末な山小屋がありここに宿泊する。

 その日は晴れていて満月が輝いていた。遠くには月明かりに照らされた雪を抱いた山々が望める。翌日は5時に起床。谷より吹き上げてくる冷たい風に震えながら日の出を待つ。太陽が昇るに連れ、山々のシルエットが浮かび上がり、紅に変化する様子を眺めることができた。

 帰りは2時間半余りの歩行であった。

ヒマラヤの山々
山小屋とヒマラヤの山々

ネパール(Pokhara)

 "Sarangkot"山はポカラ市の西側に位置する山で、標高1592メートル、ポカラ周辺の一大展望が楽しめる。さらに、天気に恵まれれば、アンナプルナ山郡が見渡せる。

 観光案内所に行き"Sarangkot"山への道順を確認する。湖沿いに歩き、登山口に達する。ここから尾根に取り付く。道は細く鮮明ではない。水田のあぜ道や、窪地を歩く。途中親子に出会い、彼等の後に続き歩く。彼等の家は山の中腹にあった。2時間余りにて峠に達する。ここには3軒の茶屋がある。ここから頂上への道は良く1時間余りであった。

 頂上からの眺めはすばらしく、北側に"Seti Gandaki"川の河岸段丘、南側には"Phewa Lake"が望める。頂上の真下まで段々畑が続き、農家が点在する。
 頂上は石垣に囲まれている。一人の少女が山羊を放牧していた。私達が中に入ると人なつこく寄ってきた。そしてここに座れと言う。持っていたパンなどを分け与える。しかし彼女は食べようとはしなかった。大事に布に包み込んだ。

 頂上からは尾根伝いに下山する。この道は幅も広く良い。町から家へ戻る人々と行き交う。町までは2時間余りであった。

河岸段丘、Seti Gandaki
Phewa Lake

ベトナム(Sapa, Bac Ha)

 ハノイ市よりベトナム北部の町、中国国境近くの山岳民族を訪ねる3泊4日のツアーに参加する。ハノイ市をマーケットの開く土曜、日曜日に合わせ、金曜日に小型ワゴン車にて出発する。
 このツアーに参加したのはオランダ人4人、スペイン人2人、カナダ在住ベトナム人2人、日本人2人、カナダ人、ドイツ人各1人、合計12人であった。それに運転手、ガイド各1人である。

 1日目、首都ハノイ市より"Sapa"市に向かう。到着は夜の8時過ぎであった。ここに2泊する。

 2日目、"Sapa"では周辺に住む少数民族を訪ねる。ゲストハウスより歩いて谷間にある村落、滝、などを見学する。少数民族の人々は固有の衣装をまとっている。しかし子供達はかなり観光客慣れしており、写真を撮ろうとすると「マネー」と手を出す。彼等の生活も観光客相手に、ショールや、ブレスレットなどを売り成り立っている。町は欧米人観光客で溢れていた。

 3日目の朝、"Sapa"より"Bac Ha"へ移動する。到着後マーケットを見学、午後は歩いて周辺の村を訪ねる。途中には棚田などがあり景色はすばらしい。一軒の農家で休息、主人の踊り、楽器演奏、地酒を味わい、町に戻る。ここは"Sapa"と比べ、観光客慣れはしていない。マーケットも周辺に住む人々で賑わっていた。

 4日目早朝出発、ハノイへ戻る。到着は夕刻となる。
 
 "Sapa, Bac Ha"少数民族訪問ツアー(3泊4日)、宿泊費、入域料含む、食事代は含まず、相部屋料金$27。一人部屋料金は$38であった。
(2002年10月現在)

村人、Sapa
棚田、Bac Ha

ラオス(Muang Sing)

 前回、2002年10月訪問時は、天気が悪くツアーは取りやめとなった。今回は天気に恵まれ、1日のツアーに参加する。参加者はイギリス人2人、イスラエル人2人、スエーデン人1人、日本人1人の6人であった。
 小型トラックに乗りトレッキングコースの入口まで行く。このツアーは尾根上に点在する3カ所のアカ族の部落を訪ねる。私達が到着すると、老婆が小さな男の子を連れて寄ってきた。そして、火傷に効く薬はないかと聞く。孫の手は黒くただれている。私にとって最初の衝撃であった。貧しく医者に連れていくことができないのだ。 

 この部落は尾根の頂にあるが、周囲は緑豊かに木々が生えているわけではない。木々は焼畑農業で焼かれいる。部落には小学校があり、子供達としばし交流を持つ。大人達は農作業に出ているためか、姿は見えない。
 2件目の村を訪ねた後、昼食は畑の中にある小屋で取った。部落では子供達の前で食事が出来ないからであろう。メニューは牛肉炒め、豚肉のミンチ、筍、餅米、ミカンなどであった。

 部落ごとに風習の違いなどがあり、アカ族出身のガイドが説明してくれる。尾根伝いに細い道を歩き、畑を横切り、川を渡る。かつて川には吊り橋があったようだが、壊れている。ガイドの案内で浅瀬を渡る。山道を登り最後の部落にたどり着く。ここは比較的に大きな部落で、斜面に高床式の建物が並ぶ。黒豚や鶏が走り回る。
 道路脇にはかつて阿片の禁断症状者を隔離した建物も残っている。

 ガイドなしで他の部落を一人で訪ねてみたが、男が寄ってきて物を売りつけたり、金銭を要求するなど、安全とは言い難かった。

 ツアー料金は10米国ドル、最低人員4人、昼食、飲料水、ガイド付き、行程は約6時間。他にも2泊3日などのコースが設定されている。料金は30ドル余りで安くはない。しかしあくまでも参加者が集まった場合であり、毎日ツアーが実施されている訳ではない。
(2005年2月現在)

アカ族部落
焼畑、働くのは女性

マレーシア(Gunung Mulu)

 ムル山国立公園はサラワク州北部に位置し、ブルネイ国の東側に位置する自然公園である。2000年にユネスコ世界遺産に登録された。公園内にはディア、ラング、ウインド、クリアウオータなどの洞窟がある。ディア洞窟では夕刻に洞窟から移動するコウモリの乱舞が見られる。
 到着した日の午後にラング、ディア洞窟を観光し、夕刻にコウモリの乱舞を見る。さらに翌日の午前中にウインド、クリアーウオータ洞窟を観光した。洞窟内の照明時間は限られておりそれに合わせる必要がある。4個所の洞窟観光には最低でも1泊2日は必要となる。各洞窟へは観光ガイドの案内が必要で、料金はRM40であった。

 クリアウオータ洞窟へはボートで行くのが一般的だが、チャーター料金は往復RM85と高い。復路の場合は他の船客がいたので、RM20と話していた。しかし私は往復とも歩くことにした。川沿いのコンクリートで固められた熱帯雨林の中の遊歩道、約4kmを歩く。しかし途中のムーンミルク洞窟へ行く400段余りの木製の階段を登る必要がある。この階段は雨に濡れるとかなり滑りやすいので注意が必要だ。私の場合は雨に遭い、頭を鍾乳石にぶつけたり、階段で転んだりと散々だった。

 各都市からムルへ直接通じる道路は無く、周辺の町より飛行機か"Miri"よりボートにて向かう必要がある。ボートは個人でチャータするため料金が高いのと日数がかかる。
 "Kota Kinabalu - Mulu"間はマレーシア航空のフォッカー50が週4便が飛んでいる。料金はRM179。日本の旅行代理店を通して予約が取れなかったため、直接マレーシア航空に電話で予約を入れる。しかし現地で乗った時には3人の乗客しかいなかった。コタキナバル在住の日本人女性、中国系の青年と私である。"Mulu - Miri"間の料金はRM84であった。

 ムルには小さな村があるだけで、中心は公園本部と飛行場である。宿泊施設は限られていて、混雑時期に公園本部に泊まるには予約が必要だ。公園本部にはバンガロー、ドミトリーなどの宿泊施設がある。私が宿泊したホステルは18台のベットがある大部屋であった。この部屋をオーストラリア人の青年と2人で占領していた。食堂で売られているミネラル水が高いのが印象的である。ホステル宿泊料金はRM18、入園料はRM5。ムル村にある宿泊施設は公園本部が運営するホステル以外にローヤルムルリゾートがある。
 公園内洞窟散策の他に、ムル山やピナクルス山に登ることも可能だ。しかし、3日から4日間の登山となる。地図はこちらを参照ください。
(2004年1月現在)

コウモリ観測所、Mulu
Wind Cave, Mulu
 
コウモリ、Mulu
Clear water Cave, Mulu

マレーシア(Niah Caves)

 ニア国立公園はサラワク州北部に位置し、ブルネイ国の南西側に位置する自然公園である。公園内にはニア、ペインテッド洞窟があり、ニア洞窟はトレーダースとグレート洞窟に分かれる。ペインテッド洞窟には1000年以上前の壁画が残されている。しかし、壁画は鮮明でない。両洞窟内に照明はなく(破損している)コウモリの糞で木道は滑りやすい。グレート洞窟は世界一大きな洞窟とされ、洞内高さは394メートルである。洞窟内では現地の人がツバメの巣を採取している。洞窟内は暗く照明がないため強力ライトがないと内部は解りづらい。
 グレート洞窟内の暗闇の中の階段を登り、さらに降り洞窟を抜けて熱帯雨林内の木道をさらに進むとペインテッド洞窟がある。この周辺には4万年ほど前に人類が居住した痕跡がみられる。

 公園本部前より川をボートで渡ると小さな博物館がある。さらに洞窟までは4km余りの木道が延々と続く。木道は地上高1メートルほどあり、ジャングルを切り開いて設置されている。洞窟へ行く途中で木道が分岐する。左の道を取るとイバン族の村があり、木製のロングハウスを見ることが出来る。さらに洞窟に近い分岐点では村人が土産物を販売している。
 私は宿泊地のバトニアから公園本部、さらに洞窟までを通して歩くことにした。その日は午後だけで往復16km余りを歩くことになった。入園料RM10。
(2004年1月現在)

木道、Niah
イバン族の村、Niah
 
Great Cave, Niah
Great Cave, Niah

マレーシア(Taman Negara)

 タマンネガラ国立公園はマレー半島中部にある自然公園である。公園面積は4343平方キロメートルと広大だ。公園内で一番高い山はタハン山で標高2187メートルである。自然公園に入るルートは4ヶ所がある。しかし、一番便利なルートは南側のクアラタハンのようだ。
 クアラタハンへ入る方法は二つの方法があり、ボート、またはバスを利用する。バスはクアラルンプールの北東部に位置する町"Jerantut"より舗装された道を1時間半余りで到着できる。バス料金はRM7、一日4本、繁忙期には旅行会社がバスなどを特別料金で走らせている。2011年2月の初めての訪問時には、乗り合いバスのことが書かれている旅行資料が見つけられなかった。その為ボートにて入ることにする。

 ボートは"Jerantut"の北に位置する"Kuala Tembeling"にあるボート乗り場(公園事務所)より乗船する。"Kuala Tembeling"へ行く方法は"Kuala Lipis - Jerantut"間を走るバスを利用する。しかし一日3本なのでかなり不便だ。私は8時15分発の列車にて"Kuala Lipis"より"Mela"に行き、バスに乗り換え"Kuala Tembeling"へ入った。バスの運転手が携帯電話でボート乗り場に連絡を入れてくれた。公園事務所にて、ボート料金RM35と共に公園入場料RM1、写真撮影許可証RM5を支払う。受領書として2枚の記名された書類が渡された。ボートは私の手続き完了を待って出発となった。乗客は私を含め5名である。

 ボートは褐色の緩やかなテンベリング川の流れをさかのぼり、3時間余りにて"Kuala Tahan"に到着した。当日は船着き場近くのドミトリーに宿泊する。8人部屋で料金はRM10である。Wifiも無料にて利用可能であった。夕暮れと早朝の川を挟んだ風景を眺めるには最高の場所である。対岸にある公園本部、タマンネガラリゾートの明かりが木々を通して見られる。ここには公園事務所、レストラン、バンガロー、ドミトリー、幕営地などがある。

 翌日は公園本部より、リゾートの建物脇の道を、キャノピーへ向かう。途中には観察小屋(Bumbun Tahan)があり、少々休息し、動物が来るのを待つ。室内には写真や説明が掲示されている。しかしそう簡単に自然界の動物は見られるようではなさそうだ。鳥の鳴き声は聞こえるが姿は見えずであった。さらに遊歩道を進み、長さ450メートル、地上高40メートルのキャノピーウオークを楽しんだ。眼下を流れるテンベリング川を眺め、熱帯雨林の上部を観察できる。その後、近くの山(Bukit Teresek)標高344メートルに登る。頂上には西洋人観光客グループがいた。ここからの眺めはすばらしく、眼下に熱帯雨林、遠くにはタハン山も見られる。急な山道(Meram Trail)を下り、反対側のタハン川に下る。歩行距離5キロメートルほどの熱帯雨林散策であった。
 Ecotourism Areas in Taman Negaraの案内地図はこちらをご覧ください。

Park Centre, Kuala Tahan
Park Centre, Kuala Tahan
 
Kuala Tahan
Canopy Walkway
 
Bukit Teresek
a saurian

 2012年1月末に再度タマンネガラを訪ねた。今回は"Jerantut"より往復バスを利用した。バスはボートより速く便利だが、初めて訪ねたときの高揚感は感じられない。バス停より歩いて前回利用したバンガローに宿泊する。
 翌早朝8時半に宿舎を出発し、ボートで川を横切り、公園事務所よりタハン川沿いの散策路を歩く、途中の観察小屋(Bumbun Tabing)で休息、この小屋はトイレと木製のベットがある。寝袋、食料、水を持ち込めば宿泊することも可能だ。タハン川を渡った対岸にも観察小屋(Bumbun Cegar Anjing)がある。しかし橋はないので、ロープを頼りに浅瀬を横切ることになる。私はさらに遊歩道を歩きタハン山への分岐点に到着する。歩行距離は7.5キロメートル、歩行時間は2時間半であった。ここで初めての登山者と出会う。マレーシア人の青年で、しばし情報交換をする。次の観察小屋までの時間、横切る川や、深さの情報を得る。彼は観察小屋に宿泊したようだ。

 私はこの分岐点で、自身の疲労具合と水と食料を考え、先に進むことを決断する。この間の熱帯雨林の道は平らで歩きやすい。ただ蛭が生息しているのが最大の問題であった。
 トレンガン川には2時間ほどで到着した。川を渡る前に休息し、昼食を取る。誰かが作った杖を見つけ出し、渡る準備を始めた。靴とズボンを脱ぎ、靴下を取ったときに足首の数カ所が蛭に血が吸われていることが解った。川を渡った後、傷テープで止血する。観察小屋(Bumbun Kunbang)到着は午後の2時であった。トレンガン川沿いを歩いてクアラトレンガンに向かう。30分ほどで分岐点に到着、吊り橋を渡り、クアラタハンへ向かう。残りの距離は10キロメートル余りである。テンベリング川沿いの道は多くの小川を横切る。その為直線上に造られた山道は上り下りがかなり激しい道になっている。途中から雲行きがおかしくなり、スコールとなった。ザックより傘を取り出す。傘をさしてのジャングル歩きであった。

 クアラタハン到着は夕闇が迫った19時頃となった。歩行距離25キロメートル。歩行時間10時間余り、かなりハードなジャングルウオークであった。途中で出会った登山者は3人のみである。このコースを一日で歩くのはかなり無理があるようだ。テンベリング川沿いはボートを利用し、観察小屋(Bumbun Kunbang)に宿泊、北部の洞窟を観光した後、"Lubok Lesong"を通って、クアラタハンに戻るコースが理想的だ。また蛭対策も必要なことを痛感させられた。
(2012年1月現在)

Bumbun Tabing
観察小屋内部、Bumbun Tabing
 
リス
タハン山分岐点
 
トレンガン川
Bumbun Kunbang

インドネシア(Ketambe)

 2012年7月、4週間余りのスマトラ島縦断旅行の最終目的地を、アチェ州南部の山村ケタンベとした。ここでインドネシア旅行の疲れを癒し、日程調整をするつもりであった。スマトラ島最北部の町バンダアチェよりメダンに向かって幹線道路を南下する。大型バスをビレウエンで下車し、ミニバンに乗り換え、標高1120mの町タケゴンに向かう。ここは山間の長さ26kmある湖Danau Laut Tawarの湖畔の町だ。さらに3000メートル峰が連なるガヨ高地の山中を南下、ブランケジェランを経て、ケタンベに到着した。3日間の山岳ドライブであった。

 アラス渓谷に位置するケタンベは、道路脇に6軒余りのゲストハウスが点在する、山間の小さな村である。観光客も多くはなく、静かな所だ。村の周辺は熱帯雨林の原始林に囲まれている。この地域は豊富な雨と霧により、着生植物、ラン、ラフレシアなどの植物が見られる。原始林にはホーンビルなど300種以上の鳥類、虎、サイ、象、オランウータン、猿、ヒョウ、熊、コブラなどの動物が生息している。その為レウサー山国立公園はスマトラ島熱帯雨林の一部として、2004年にユネスコ世界遺産に登録されている。多くの外国人観光客はここに滞在し、ガイドを伴い周辺の温泉や滝などを訪ねたり、動物の観察、ラフティング、キャンプなどを楽しんでいる。

 私はガイドを雇わずに、一人でオランウータンに会うためジャングルに入ることにした。村より幹線道路を北上し、30分ほど歩くとジャングルへの入り口に到達する。良く踏み固められた山道を10分ほど進み、大きな倒木を乗り越えたところで、偶然に一匹の雄オランウータンに出会う。そこにはトレール上に1本の白い花が咲いた木があり、食べ捨てられた小枝が散乱していた。ここは彼らの餌場であった。私は立ち止まり、静かに樹上のオランウータンに見入る。オランウータンは花を食べ、時々高く口を鳴らした。しばらく観察していると、一匹の雌が赤子を横に抱いて樹木を渡ってやって来た。しばし三匹は一緒に樹上にいたが、その後雄は立ち去る。そして雌と赤子がその木に留まり、白い花を食していた。

 オランウータンはボルネオ島北部サバ州サンダカン市、サラワク州クチン市郊外で見る機会があったが、両方とも餌付けがされている。観光客は入場料を払い、定刻になると入場が許可され、係員が餌を与えるのを見物する。ただそれだけの観光施設だ。しかし、ケタンベでは自由な時間に一人で山に入れる。そして原始林の中で、自然のまま生きる彼らの姿を観察できる。

 私は三日間ケタンベに滞在した後、クタカン、ベラスタギを経てメダンに向かう。ラビラビ(乗り合いトラック)、ベカック(三輪タクシー)、ミニバンの乗り継ぎで、運賃は6万5千ルピア、所要時間は9時間余りであった。途中の幹線を外れた道は補修が十分ではなく、穴ぼこだらけで、埃に悩まされた。
 ガイド料金は一日25万ルピア、二日間は35万ルピア、三日間は70万ルピアとなっている。この料金はスマトラガイド協会により決められている。ゲストハウスの宿泊料金は5万ルピアからである。(¥1=Rp115)

Takengon
Blangkejeran
 
アラス川、Ketambe
幹線道路、Ketambe
 
 子供のオランウータン、Ketambe
雌のオランウータン、Ketambe
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