貧乏旅行の話

18.キナバル山に登る

キナバル山概要

登山準備と登山許可

登山費用

登山ルート

装備

登山記録

キナバル山概要 

 キナバル山は東南アジアの最高峰、ボルネオ島の北部に位置し、マレーシアのサバ州に属する。2000年12月にユネスコ世界遺産に登録される。キナバル山は熱帯にある高山のため多くの植生に富む。麓は熱帯雨林に囲まれ、上部は花崗岩が露出し高山植物が見られる。山のすそ野にはマウンテンオーク、シャクナゲ、ランなどの熱帯植物、食虫植物、リスなどの小動物が生息している。

 キナバル山の頂上部は東西3キロメートル余りと広く、15余りのピークがある。この山の中央に位置する最高峰4095メートル(ロウズ ピーク)に登ることにした。
 キナバル山に登るには山小屋の予約が先ず必要となる。山小屋の宿泊定員が決まっているからだ。日本の山小屋のように蚕棚で、詰め込み式ではない。ベットの数が登山定員(約130人)となっている。登山者は外国人観光客が半数以上を占める。因みに2004年度の登山者数は43,430名である。

 世界一簡単に登山できる4000メートル峰との指摘もある。登山道は一本道で、階段状で良く整備されている。1キロメートルおきにある休息所には東屋と水の供給、水洗トイレ、ゴミ箱が設置されている。高度3800メートルより上部は岩盤が露出しており、案内ロープが張られペイント表示されている。視界不良時でもルートは解りやすく整備されている。

 標高3300メートルにあるラバンラタ山荘の設備も良く、各部屋は鍵付きでスチール製の2段ベット、オイルヒータの暖房が付いている。共用の洗面所には温水シャワーが出る。特別室にはシャワー、トイレが付属している。
 この山小屋には食堂があり早朝2時から営業している。食事はビュフェ形式(RM20)で一般的なマレーシア料理が食べられる。売店には飲み物や菓子類が置かれている。

 登山口を早朝に出発すれば一日で登山して麓に戻ることもできそうだ。しかし一般的には朝8時頃に公園本部前をガイドと共に出発し、途中の山小屋に一泊、翌早朝3時頃に登り始め、頂上にて日の出を見た後下山する予定が組まれている。
 登山ガイドが必要なほど危険な処や道に迷うことはなさそうだ。しかし登山者は公園本部により入山料の徴収と共に、番号と名札を着けられ、ガイドを伴い、完全に管理されることになる。
 キナバル山は4000メートルを超える高山のため、高度に弱い人は高山病に注意が必要となる。又2日目は早朝の登山で高山のため防寒対策も必要だ。

 登山前日は公園本部のロッジに一泊するか、近くの町ラナウのホテルに宿泊すれば、朝8時頃の出発に都合がよい。公園中心部にはキャビンとホステルなどの宿泊施設、レストラン、山岳植物園、展示室などの各種の設備がある。公園内にはハイキングコースも設けられている。この付近の標高は1500メートル余りで夜はかなり涼しくなる。

 キナバル公園本部周辺の地図はこちらをご覧ください。
サバ州観光局はキナバル公園に関する案内書を発行している。表紙写真はこちらをご覧ください。

キナバル山公園本部入口
夕暮れのキナバル山
 
登山ゲート
うつぼかずら
 
休息
ラバンラタ山荘

登山準備と登山許可

 キナバルゴールドリゾートの関連会社、旅行代理店(KINABALU NATURE RESORTS SDN. BHD.)にて山小屋の予約を入れる。これがないと登山できない。キナバル山公園本部では予約業務はしていない。公園本部にて登山手続き時に入山料、保険料、ガイド料を支払う。
 自由にグループを組むことは可能であるが、写真撮影や動植物を観察しながらゆっくりと登山したければ一人でガイドを雇うことになる。荷物が多ければポーターを雇うことも可能であるが、登山に必要でない荷物は公園本部に預けることが出来る。

 登山証の記載内容
  氏名、日付、登録番号
Welcome to Mt.Kinabalu
Take nothing but photographs. Leave nothing but footprints.
Kinabalu Park World Heritage Site

登山費用

 個人で山小屋の予約を取り、現地でグループを組めば最低限の費用でキナバル山の頂上に立てる。この場合の費用はRM240位である。
1.入山料 :RM100(外国人料金、マレーシア人はRM30)
2.ガイド料:RM70(2日間、1〜3人までの料金、8人まで一人のガイドにて可能)
3.保険料 :RM3.50
4.山小屋 :RM34(相部屋料金、ラバンラタ山荘以外はRM17)
5.入園料 :RM15(公園本部)
6.ミニバス:RM5 (公園本部−登山ゲート往復)
7.証明書 :RM10(希望者のみ発行してくれる)
8.ホステル:RM12(相部屋料金、公園本部)
9.食事代 :RM60(昼食、夕食、朝食)

各料金は2004年1月現在、(RM1=\30)、(T/C,$1=RM3.765)
マレーシア通貨単位はリンギット、アメリカドルとほぼ連動している。リンギットは国外持ち出し制限(RM1000)があり、国外では両替不可。


*注記:近年キナバル山登山費用は大幅に改訂されている。詳細は下記サイトを確認ください。

1.キナバル山、山小屋の予約サイト
 現在の予約サイトはSutera Sanctuary Lodgesに変更されている。こちらを参照ください。

2.登山費用について
 山小屋2泊、食事付きのパッケージ料金は、ティンポン往復(パッケージC)は、MYR 1,746.00(約5万2千5百円)、マシナウ往復(パッケージD)の場合は、MYR 1,642.00(約5万円)となっている。登山許可料金、ガイド料金、ポーター料金などの詳細はこちらを参照ください。

3.ロウズピーク以外の登頂費用
 ホームページによるとロウズピーク以外の13のガイド追加料金が表示されている。
(2013年4月現在)

登山ルート

 キナバル公園本部(標高1563.8m)- Timpohon Gate(標高1866.4m)- Kandis Shelter(標高1981.7m)- Ubah Shelter(標高2081.4m)- Lowii Shelter(標高m)- Mempening Shelter(標高2515m)- Layang-layang Staff Qtrs(標高2702m)- Vilosa Shelter(標高2690m)- Paka Shelter(標高3080m)- Laban Rata Resthouse(標高3270m)- Syat-Sayat Hut(標高3668m)- Low's Peak(標高4095.2m)

 一日目は登山ゲートより山小屋までの距離6キロメートル、約4〜5時間、標高差約1500メートルを登る。登山道は階段状で、ほとんどが登りである。登山道は森林に囲まれ、日本の山とは植生が違うだけで大きな違いはなく、森林限界は3400メートルを超える。

 二日目は山小屋より頂上までの距離3キロメートル、約2〜3時間、標高差約800メートルを登る。3500メートルより上部は花崗岩が露出しており低木はない。満月で天気が良ければ懐中電灯なしで登山可能である。朝の5時半過ぎに空が明るくなり、6時頃が日の出であった。早く登頂すると日の出まで寒い中(零度位)待つことになる。
 登頂後山小屋に戻り朝食を取り、休息した後下山することになる。山小屋のチェクアウトは10時なので部屋に荷物を置いておくことも可能だ。

 キナバル山公園本部からの登山が一般的だが、マシナウ ネイチャーリゾートからラヤンラヤン職員宿舎へ出るコースが1998年10月に開設されている。しかしガイド料金などは割り増しになる。
 登山ルート地図はこちらをご覧ください。

装備

 一般的な登山用具(ザック、軽登山靴、雨具、防寒具、手袋、帽子、懐中電灯、着替、洗面具、行動食、水筒、常備薬等)で十分である。

登山記録

 1月7日(水)晴、私はコタキナバルの長距離バスターミナルを、9時半発のサンダカン行き大型バスにて出発した。12時前にバスはキナバル山公園入口に到着した。公園事務局にて手続き後ムンギランホステルに落ち着く。入山料と保険の支払い時に、ガイド料は翌日のグループ結成後支払うことにする。

 ホステルは2階が寝室と洗面所、1階は自炊用台所と食事室になっている。一部屋の定員は8人で男女相部屋である。バスで会ったカナダ人3人グループも一緒だった。
 ビジターセンターにあるレストランにて遅い昼食を取る。その後足慣らしのため公園内のハイキングコースを歩く。公園内の地図を入手しようとするが詳細な物はないようだ。

 1月8日(木)晴、午前6時起床、レストランに行き朝食を取る。部屋に戻ると誰もいない。急いで荷物を持って公園本部へ急ぐ。7時半集合であったがここにも人は集まってはいない。昼食用のサンドイッチを道路脇の食堂で購入する。登山者が集まり始め、8時近くになると準備完了したそれぞれのグループが、ガイドと共にライトバンに乗り出発しだした。
 私は前日約束したグループ作成に失敗し、急きょ相手を捜すことにする。ガイド紹介所でも登山者名簿を見ながら協力してくれた。近くにいた若いイギリス人4人(男3人、女1人)とグループを組む。

 首に掛ける許可証が完成し、40歳ぐらいのやせた男性の登山ガイドを紹介され、ガイドと共にライトバンに乗り込む。登山ゲートまでは10分余りだ。ゲートから滝までが幅の広い階段の降りである。その後は階段状の登りが延々と続く。
 出発時刻は8時前後が多いため、各休息所ではかなりな人々と出会う。20人ほどのマレーシア人グループと一緒になる。彼等は会社の同僚で一週間の休みを取ってきたと話していた。マレー、中国、インド系の人々がおりマレーシアの縮図のようなグループであった。その中の一人の女性が流暢に日本語を話した。
 休息しているとリスやネズミが登山客の食べる菓子などを貰いに寄ってくる。

 山小屋への荷揚げは中年女性の仕事だ。30kg余りの食料やペットボトルなどを担ぎゆっくりと登っていく。そして降りには山小屋で発生するゴミを担ぎ降ろしていた。
 10時過ぎになると下山してくる人々とのすれ違いが多くなる。下山するガイド達がビニール袋を片手に、ゴミを拾いながら降りてきているのは印象的だった。

 私達は午後1時前に山小屋に到着した。遅い昼食を取りゆっくり休むことにする。私の泊まった部屋は4人部屋で2段ベットが2台あり、昨日ホステルで一緒だったアジア系ニュージーランド人の学生と二人だった。彼は登山を趣味としており装備も標準的な登山用品を揃えていた。
 イギリス人と共に食堂にて紅茶を飲みビスケットを食べながらおしゃべりをする。食堂前は広いテラスになっている。ここからは広大な樹林と遙か遠くに南シナ海も望める。夕日を見ながらドイツ人の青年と今回の旅行について話す。

 夕食は6時過ぎに10品余りのビュッフェを食べる。これが失敗だった。食べ過ぎたのだ。翌日のことを考え9時過ぎに寝ようとしたが、胃が働いていてなかなか寝付けなかった。十分な睡眠も取れず翌日の朝を迎える。

 1月9日(金)晴、午前2時起床、洗面のため部屋を出るとガイドが廊下に立っていた。起こしに来てくれたのだ。洗面後食堂に行き紅茶とビスケットを食べる。午前3時山荘出発、外は満月でかなり明るい。今日はガイドが先頭に立ち歩き出した。山荘を出ると林の中の登りで、足元は暗く懐中電灯で照らしながら歩く。最後の山小屋を過ぎると岩山となり月明かりで懐中電灯は不要だった。

 白いロープを頼りに岩肌を登る。マイペースで登ったため一人で先に行くことになった。右手に幾つかのピークを見ながら登る。この時点では頂上は見えない。正面には切り立った大きなピークが見えてくる。その右手に円錐状にそびえるピークが最高峰のロウズピークであった。
 頂上には一時間余り滞在し、完全に日が昇った時点で下山を開始した。しかしこの時刻になっても登ってくる人達もいた。下山は視界が良ければ自由にルートを取れる。急な斜面はロープを頼りに降る。雨天時はスリップに注意が必要だ。

 山小屋からの降りは連続的に続く大きな段差のため膝への負担がかなり大きく、登りと同様な時間を要した。公園本部への到着は午後1時頃となった。軽く昼食を取った後、公園本部前で下山客を待つワゴン車を5人でチャーターしコタキナバルへ向かう。
 下山途中に日本人中年グループ20人余りの登山者に会う。中年登山者は海外にまで進出してきているようだ。月が明るく満天の星とは行かなかったが、天候には恵まれた登山であった。

登山ガイドとイギリス人女性
頂上(ロウズピーク)
 
早朝の山頂直下
日の出
 
セントアンドリュース
雲海
 
山影と月
登山道とロウズピーク

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