貧乏旅行の話

30.観光ガイドを雇う

観光ガイドを雇う

観光案内所を訪ねる

観光ガイドを雇う

 旅行の形態は大きく分けると「団体旅行」と「個人旅行」に二分される。旅行を目的別で分けると「知識習得形」と「休息形」に分けられる。またその共存もあり得る。遺跡、博物館、美術館や伝統芸能を訪ね教養を高めたり、またビーチのホテルや山のロッジでのんびりするなどである。

 団体ツアー旅行は旅行期間、訪問地などが決められて売られている。当然、添乗員も同行する。移動もバスやミニバンの手配がされている。日本人の海外団体旅行には、添乗員とは別に日本語を話すガイドが手配されている。観光名所では歴史的背景や、由来などが説明される。博物館や美術館などでは多くの展示物の中で、特に重要な物を選び解説してくれる。大英博物館、ルーブル美術館、プラド美術館などである。

 個人旅行の場合、最初から観光ガイドはいない。自分で観光案内書を読むか、博物館や美術館では展示物の説明書を読む必要がある。しかし、説明書が日本語や英語で書かれていればまだ良いが、理解不能な言語ではお手上げだ。ヨーロッパ各国の王宮や古城などではガイド付きのコースもある。しかし日本語で案内してくれるところは少ない。
 パリ郊外のベルサイユ宮殿では多くの見学コースが設定されていた。庭園や公式に利用された部屋は監視員がおり自由に見学できる。しかしその他のコースは別料金で、ガイドが案内する。私は裏部屋を訪ねるコースに参加したが説明はフランス語のみであった。

 ハンガリーの首都ブタペストで、郊外のドナウベンドを訪ねる国営旅行社の観光ツアーがあった。参加者はドイツ人夫婦、フランス人女性、イギリス人夫婦である。中年の女性ツアーガイドは英語、ドイツ語、フランス語を巧みに話していた。私が日本人だと解ると今度は日本語も勉強すると話していた。それに、各国の知識も持っており、それぞれの人々との話題にしていた。日本人の私には鈴木自動車の工場開設やハンガリーで活躍する音楽家の話をしてくれた。

 普段チップを払うようなホテルなど関係ない貧乏旅行者も、ヨーロッパでは施設ガイドや観光ガイドにチップは必要だ。建物の出口に立つ案内者にさりげなく旅行者はチップを渡している。まだ若く、貧乏然とした私からはチップを受け取らない人もいたり、寒い冬で手を暖めてくれた中年女性もいて今でも忘れがたい。

 ところが、最近は日本や外国でもボランティアガイドがいて、無料で案内してくれる所がある。これは貧乏旅行者には有り難い。私は出来るだけ利用させて貰っている。日本では東京江戸博物館、東京国立博物館、明治村などであろうか。
 先日訪ねたバンコクの国立博物館にも日本語、英語、ドイツ語などのボランティアガイドがいた。シルク王が住んでいたジムトンプソンの家にはタイ人女性の日本語ガイドがいる。スワンパッカード宮殿では英語ガイドだけがいる。そこで英語ができない日本人は、最初からガイドが付かない。説明書(レジュメ)だけを渡され、勝手に見学しろというところも存在する。

 しかし先進国以外だと、遺跡や博物館などを案内をして、幾ばくかの金銭を得ようとしている人々がいる。カンボジアのクメール遺跡などで、それは子供だったりする。
 インドネシアの首都ジャカルタのオランダ植民地時代の施設を訪ねた折り、英語で話しかけてきた男がいた。勝手に施設内を案内し、最後に金を支払えという押し売りガイドだ。かなり高い金額を請求してきたので支払いを拒否した。最初は高圧的であった若い男は、自分の窮状を訴えてきた。私は妥協して、最後に幾ばくかの金を支払い別れる。

 ビルマの首都ヤンゴンの丘にあるシュエダゴン仏塔では、外国人だけが入口で記帳させられ、入場料を請求される。そこに書かれた国名を頼りにガイドがよってくる。両側に土産店が並ぶ長い階段を裸足で登りきると、黄金色に輝くパゴダが出現する。私の後を息せき切って追いかけてきたらしい、若い女性がいた。
 彼女はカメラマンと話している私の様子を伺い、日本語で話しかけてきた。そして、観光ガイドであると自分の身分を明かし、料金は5米国ドルと話した。

 普段観光ガイドなど雇うことのない私も、彼女には良いかなと思わされた。そして、ガイドを了承する。仏教の歴史、ビルマにおける習慣、仏像に張る金箔も用意されていた。その後、二人はインド人街に行き昼食を取る。さらに、午後も市内の寺院や市場、観光名所を一緒に訪ねることになる。初めて訪問した国で、国内事情の話などを聞くのにガイドも必要だと再認識した。

 タイ東北部イサーン南部、カンボジア内にあるクメール遺跡で、英語の話せない若い女性のガイドを雇ったことがある。タイ側にあるビジターセンターで、展示物を見ていると話しかけてきた若い女性がいた。察するに遺跡を案内すると私は理解した。ガイドとはいえ、若い女性と遺跡観光も悪くはないと思い了解した。英語の話せない彼女の説明はほとんどなかった。四個所ある山門を指さして「ゴプラ」と言ったくらいだ。道案内役として以外機能していなかった。
 この遺跡の周辺には未だ地雷が埋設されている。その点でも案内役は必要かと納得することにした。
 

 ビーチリゾートでのんびりする旅行に観光ガイドは必要ない。しかし、トレッキングなどで山地に入る場合には案内人が必要となる。ボルネオ島北部、マレーシアサバ州、キナバル山登山にはガイドは必須だった。(キナバル山登山案内はこちらをご覧下さい。)
 外国では治安の関係で、個人での訪問が難しい場所も存在する。さらに地図や目的地までの公共交通機関がない所もある。そこで現地旅行社が企画するツアーに参加するのが安易な方法になる。自然公園散策、史跡訪問、象に乗り森林内散策、筏に乗り川下り、ラフティングなどいろいろなツアー企画がある。
 タイのチェンマイなどで有名な山岳民族を訪ねるツアーがある。ゲストハウスに旅行者を安く泊め、これらのツアーに参加させて利益を上げる。ツアー参加中に預けた荷物の盗難事件も発生しているらしい。

 ベトナム旅行では多くのオープンツアー会社が存在する。これらは多くの観光地や都市が網羅されている。バスや船などの交通機関、ホテルやゲストハウスなどの宿泊施設、食事、観光ガイドなどが含まれている。しかし、観光ガイドの話す言葉は英語だ。そこで、英語が理解できないとかなり悲惨なことになる。(ベトナムオープンツアーはこちらを参照下さい。)

 インドなどでも観光地を巡る定期観光バスが多く運行されている。寺院や遺跡を訪ねるコースや、町の施設を案内する物などいろいろだ。ある町の観光ツアーでは外国人は私一人であったが英語でガイドしてくれた。最初インド人から「何故英語で話しているのか」とクレームが出たが、外国人がいるとガイドは説明し納得していた。インドでは旅行できる階層は英語が話せるので問題はないようだ。
 韓国の慶州で参加した観光バスツアーは外国人は私一人であった。ガイド役の女性は英語が話せず、韓国語のみであった。バスの停車時間などの確認にかなり苦労した。幸い途中から参加した日本への留学経験がある学校施設の理事に会い、助けられることになる。

 観光シーズンでは運行されているツアーも、オフシーズンでは難しいところもある。旅行者が集まらないところはそもそもツアーなどは存在しない。そこで、個人で手配する必要がある。目的地まで道順が解ればレンタカー、レンタルバイク、レンタル自転車を借りるのも一方法だ。タイなどはかなり安い。車は1000バーツ位から、バイクは200バーツから、自転車は30バーツから借りられる。
 しかしそれが難しいところはタクシーやボートをチャーターする必要がある。これが一筋縄ではいかないのだ。

 インドネシアのカリマンタン旅行ではかなり苦労した。州の観光案内所はほとんど機能していなかった。目的地への交通手段、時刻などを聞いても職員の回答は全て、航空会社、バス会社や船会社に確認しろであった。何も資料は持ち合わせていないのだ。
 勝手の知らない土地で、言葉も満足に通じなければこれらを手配することさえ難しい。英語の話せるガイド役がどうしても必要となる。しかも、ガイドの人件費、交通費、宿泊費、食事などを支払わなければならない。長期の場合には金額もかさみ、貧乏旅行者向きではない。結局は近くの町まで行っても諦めざるを得ないことも多々ある。それが個人旅行だ。

ガイドの女性、Yangon
ガイドの女性、Khao Phra Wihan

観光案内所を訪ねる

 初めての知らない町に列車やバスで到着し、最初に訪ねる所は人によって違うかも知れない。私は観光案内所に行くことにしている。手元に地図や資料がない場合には、ここを頼りにするのが一番確かだ。
 ヨーロッパなどの鉄道が発達している国では、鉄道駅に観光案内所がある。ここで最初に地図を貰う。さらに重要な観光ポイントを聞く。そして安い宿泊施設を決め、地方色豊かな食事ができる処までも確認する。観光客が必要とする情報が容易に手に入るからだ。

 最近の個人旅行者はほとんどが観光ガイドブックを持っている。これには観光地の詳細が記載されているので、観光案内所にはあまり足を運ばないかもしれない。必要性を感じないであろう。しかし私は最新の情報を得るために出来るだけ訪ねることにしている。何処も訪問者が少ないので歓迎されるのも一因だ。

 案内所では次の目的地への行き方、列車やバスなどの発車時刻、その町で行われるイベント、重要な観光地等を聞き、ツアーバスの有無を確認、さらに乗合バス等交通料金の確認をする。人によっては「ここは是非訪ねた方がいい」、「ここは面白くない」等個人の感想を話してくれる場合もある。個人的な感想にはその人の趣味や好みが当然含まれている。その土地の人には当たり前のこと、面白くもおかしくもない物も当然存在する。しかし外国人旅行者が何を目的に来ているか、知識を持っている場合もある。それ故に親切な案内が得られ、他の観光地の資料までも手に入る場合もある。
 案内所で地図やパンフレットを貰った後に、私は旅行の話をするのが常だ。今まで何処を訪ね、これから何処に行く予定かを話す。最後に台帳に名前と感想を記帳し、お礼を言いその場を去ることになる。

 ホテルの従業員や道で会った人に、観光案内所の場所を聞いても知らない場合が多々ある。地元の人には余り関係がない所だからだ。私の経験では有名な観光地の警察官までが知らなかった。それだけ訪ねる人が少ないのであろう。これは日本人で東京に住んでいても、東京浅草の観光案内所が何処にあるのか、知っている人が少ないのと同じかもしれない。観光案内所が町外れの不便な場所や移転していれば尚更のことだ。
 国によって観光案内所の呼び方も違う。一般的にはツーリスト・インフォメーション・センターと英語で言うが、タイではTAT(Tourism Authority of Thailand)、マレーシアでは"Tourism Malaysia"などと呼ばれる。

 観光案内所も観光立国を目指している国と、予算も満足に取れない余裕のない国とでは違いも大きい。カンボジア、ラオス、ビルマのようにパンフレットや地図も提供しない国も存在する。もし地図が有ったとしても有料だったりする場合もある。この様なところでは必然的に訪ねる観光客も少なく、交通機関などの情報も持ちえていない。しかしタイやマレーシアのように地図、ホテルリスト、交通機関の時刻表、日本語資料などが充実している国々もある。
 

 日本の若者が利用している観光案内書は「地球の歩き方」が一般的だ。初期のこの本は投稿者の情報にて成り立っていた。何処其処のホテルの料金はいくらであった。設備は「良かった」、「悪かった」、「親切だった」などと投稿者の文章がそのまま載せられている。各投稿者の訪問時期にかなりのずれがあり、インフレ率の高い国では現地通貨で金額が書かれていると、ほとんど意味を成さない、参考にならない内容も多く見られた。
 新しい版はこの辺が修正され情報が統一されてきているようだ。しかし相変わらず「教えてあげる」という書き方が目立つ。「歩いてみよう」「行ってみよう」等と記述されている部分が鼻に付く。又地図が不確かでスケールが書かれていない物が多い。町を徒歩で観光する旅行者には不親切だ。
 内容から察するに、この本はあくまでも初心者、若者向けに書かれているようである。

 西洋人が利用しているガイドブックは、オーストラリアで発行されている「Lonely Planet」が一般的である。このシリーズは全世界をカバーし、歴史、文化、風俗等にも言及している。さらに新版毎に内容が充実してきている。
 この本は英語で書かれているが、日本語(メディアファクトリー版)、ドイツ語、フランス語等の各国版があるようだ。驚いたのはベトナム等でこの本の最新版コピーが売られていることだ。表紙はカラーコピーされていて本物に近く、本文や写真などのグラビアページは白黒コピーされ、地図などがコピーのため鮮明ではない。かなり安く売られているので、大がかりに印刷されている可能性がある。           

 これらのガイドブックには地図があり、観光地、ホテル、レストランなどが詳細に記載されている。旅行者はガイドブックに書かれた観光地を周り、ホテルに泊まり、レストランに行き、紹介された食事をとる。さらに土産品までも買う。ガイドブックに書かれた物を検証して歩く旅に落ち入りやすい。
 重くかさばる詳しく記述されたガイドブックを持たない旅も手探りでまた面白い。そのような個人旅行者に観光案内所は大きな味方だ。

Malaysia Tourist Information Complex
(MATIC)
観光局でのショー

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